あれは八月の茹だるような暑さが続くある午後のことで、私はいつものように裏庭の雑草を抜いていましたが、生垣の奥から響いてくる不自然な低音の羽音に気づいた瞬間に私の全身には冷たい戦慄が走りました。おそるおそる茂みをかき分けると、そこには私の頭よりも一回り大きな、あの禍々しいマーブル模様を纏ったスズメバチの巣が鎮座しており、数匹の大型の蜂がこちらを威嚇するようにホバリングを開始したのです。これが噂に聞く緊急のスズメバチ駆除が必要な事態なのだと直感した私は、一目散に家の中に逃げ込みましたが、それから数日間は窓を開けることさえ怖くなり、平和だったはずの庭が自分にとっての禁忌区域へと変貌してしまったことに強い憤りと不安を覚えました。当初は自力での解決も考えましたが、ネットで調べた凄惨な事故の記録を読むにつれ、一時の出費を惜しんで一生の傷跡や命を危険に晒すことの愚かさを悟り、私は地域で実績のある専門のスズメバチ駆除業者に助けを求めることに決めたのです。当日やってきたプロの作業員は、蜂の防護服に身を包んだ威厳のある姿で、まずは巣の位置を正確に特定した上で、周囲の気流や戻り蜂の動線を分析し、一般人には真似できないような手際の良さで駆除のシミュレーションを提示してくれました。作業が始わると彼は高圧の薬剤噴射機を用いて巣の入り口を瞬時に封鎖し、中から反撃を試みようとする無数の蜂たちを次々と無力化していきましたが、その際に漏れ出すザーッという翅の震える音は、家の中にいた私にも恐怖を抱かせるほどの凄まじいエネルギーでした。わずか三十分足らずで巣は物理的に撤去され、地面には何百もの骸が転がっていましたが、最後に作業員が巣の跡地に特殊な忌避剤をコーティングし、これで来年はここには作られませんよと微笑んだ時、私はようやく数日間続いていた悪夢から解放されたことを実感しました。スズメバチ駆除とは単に虫を殺すことではなく、奪われた自分のテリトリーを毅然とした意志で奪還する行為であり、そこには専門家ならではの科学と技術の裏付けが必要不可欠であるということを、私はこの実体験を通じて身をもって学びました。今でも庭で羽音が聞こえると一瞬体が強張りますが、あの日プロの技術を間近で見たことで得られた正しく恐れるという知恵は、私にとって何物にも代えがたい財産となっています。自然は美しいだけではなく、私たちの足元にこうした牙を隠し持っているということを、身をもって知った夏の終わりでした。