鳩の巣を撤去し、フンで汚れたベランダを清掃し終えた時の、あの解放感。しかし、一度巣を作られたということは、その場所が鳩にとって「子育てに最適な、安全で快適な場所」であると、認定されてしまったことを意味します。根本的な対策を講じなければ、翌年の春、また同じ場所に新たな鳩がやってきて、悪夢が繰り返される可能性が極めて高いのです。鳩との戦いにおいて最も重要なのは、駆除そのものよりも、むしろ「二度と巣を作らせない」ための徹底した予防策なのです。予防策の基本は、鳩にとっての「安全性」と「快適性」を、根こそぎ奪い去ることにあります。まず、最も確実で効果的な方法が、物理的に鳩の侵入を防ぐ「防鳥ネット」の設置です。ベランダ全体を、隙間なく、そしてたるまないように専用のネットで覆ってしまうことで、鳩は物理的に侵入することが完全に不可能になります。専門業者に依頼するのが最も確実ですが、自分で設置する場合は、鳩が通り抜けられない、網目の細かいもの(三センチ角以下)を選び、天井と床、壁にフックなどをしっかりと固定して、ピンと張ることが重要です。次に、鳩が留まりやすい場所に、物理的な障害物を設置する方法も有効です。例えば、ベランダの手すりの上に、市販の「防鳥ワイヤー」を数本張ったり、剣山のような「プラスチック製のスパイク(鳥よけマット)」を設置したりすることで、鳩にとっての足場を奪い、休憩場所として利用されるのを防ぎます。ただし、これらは設置できる場所が限られるため、防鳥ネットと組み合わせて使用するのが効果的です。また、鳩が嫌がる匂いや感触を利用した「忌避剤」の使用も、補助的な対策として有効です。ジェル状の忌避剤を手すりなどに塗布すると、そのベタベタした感触を嫌って、鳩が留まらなくなります。スプレータイプのものは、鳩が頻繁に訪れる場所に定期的に噴霧することで、ハーブなどの鳩が嫌う匂いで、その場所を不快な場所と認識させます。ただし、忌避剤は雨風で効果が薄れやすいため、継続的な使用が必要です。これらの対策を組み合わせ、「ここは危険で、居心地の悪い場所だ」と、鳩に根気よく学習させ続けること。それこそが、平和なベランダを取り戻すための、最も確実な道筋なのです。
鳩の巣を二度と作らせないための予防策