アクアリウムの世界において、「赤虫」は多くの熱帯魚にとって最高のご馳走として知られています。その嗜好性の高さから、魚の食欲がない時や、繁殖を狙う際の栄養補給など、様々な場面で重宝されます。しかし、その与え方にはいくつかのポイントと注意点があります。餌としての赤虫の最大のメリットは、その高い栄養価と嗜好性にあります。高タンパクで、魚の成長を促進し、体色を鮮やかにする「色揚げ効果」も期待できます。普段は人工飼料に見向きもしないような魚でも、赤虫を与えると目の色を変えて食いつくことが多く、餌付けのきっかけとしても有効です。市販されている観賞魚用の赤虫には、主に二つのタイプがあります。一つは「冷凍赤虫」です。キューブ状に冷凍されており、栄養価や鮮度が保たれているのが特徴です。与える際は、別の容器に飼育水などを入れて自然解凍し、溶け出した体液(ドリップ)を軽く洗い流してから与えるのが一般的です。ドリップは水質を悪化させる原因になるため、凍ったまま水槽に入れるのは避けましょう。もう一つは、「乾燥赤虫(フリーズドライ)」です。常温で長期保存が可能で、手軽に与えられるのがメリットです。ただし、冷凍タイプに比べて栄養価がやや劣る点と、水を吸って膨らむため、魚が食べ過ぎると消化不良を起こす可能性がある点には注意が必要です。赤虫を与える上での最大の注意点は、「与えすぎ」です。栄養価が高い分、食べ残しは急速に腐敗し、水質を著しく悪化させます。アンモニアや亜硝酸塩の濃度が急上昇し、魚が病気になったり、最悪の場合は死んでしまったりする原因となります。与える量は、数分で食べきれる分だけにし、食べ残しは速やかに取り除くようにしましょう。また、赤虫ばかりを与えていると、栄養が偏ったり、他の餌を食べなくなったりすることもあります。あくまで「おやつ」や「特別食」と位置づけ、人工飼料を主食としながら、バランスの取れた給餌を心がけることが、魚を健康に長く飼育するための秘訣です。