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賃貸物件で鳩の巣!費用は誰が払う?
賃貸マンションやアパートで鳩の巣が発見され、専門業者による駆除が必要となった時、入居者にとって最大の関心事となるのが「その駆除費用は、一体誰が負担するのか」という問題です。高額になることもある駆除費用を、自分が支払わなければならないのかと、不安に思うのは当然のことでしょう。この費用負担の問題は、民法の考え方と、賃貸借契約の内容に基づいて判断されます。結論から言うと、ほとんどの場合、鳩の巣の駆除費用は「大家さん(貸主側)」が負担することになります。民法では、賃貸人(大家さん)は、賃借人(入居者)がその物件を安全かつ快適に使用できるように維持する義務(修繕義務)を負っていると定められています。蜂の巣や鳩の巣の存在は、入居者の安全な生活を脅かす「建物の不具合」や「瑕疵(かし)」と見なされます。そのため、その不具合を解消し、安全な状態に戻すための費用は、原則として貸主が負担すべき、というのが基本的な考え方です。ベランダや軒下、共用廊下といった場所にできた鳩の巣は、入居者が通常の使用をする上で、その発生を防ぐことが困難な不可抗力です。そのため、駆除費用を入居者に請求するのは、法的には難しいと言えます。しかし、この原則にはいくつかの例外が存在します。例えば、入居者が日常的にベランダで鳩に餌付けをしていたなど、明らかに巣を誘引するような行為をしていた場合は、入居者の「善管注意義務違反」として、費用の一部または全部を負担するよう求められる可能性もゼロではありません。また、鳩の巣を発見したにもかかわらず、長期間にわたって管理会社や大家さんに報告せず、放置した結果、巣が巨大化し、フン害が深刻化して、駆除や清掃に通常以上の費用がかかってしまった場合も、その報告を怠った責任の一部を問われる可能性があります。とはいえ、これらはあくまで例外的なケースです。賃貸物件で鳩の巣を発見したら、まずは速やかに管理会社や大家さんに報告し、対応を相談する。その手順を正しく踏めば、費用負担の心配はほとんどの場合、不要であると理解しておいて良いでしょう。
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我が家のベランダが鳩の巣になった日
全ての始まりは、一本の小さな小枝でした。ある春の朝、賃貸アパートのベランダの隅に、見慣れない枯れ枝が一本落ちているのに気づいたのです。その時は「風で飛んできたのかな」と、何の気なしに拾って捨てました。しかし、翌日には三本、その次の日には十本と、小枝は着実にその数を増やしていきました。そして、週末を迎える頃には、エアコンの室外機の裏の狭い隙間に、お世辞にも上手とは言えない、しかし紛れもない鳥の「巣」が完成していたのです。犯人は、毎日ベランダの手すりにやってきていた、一羽の鳩でした。最初は「まあ、自然のことだし」と、どこか牧歌的な気持ちで眺めていました。しかし、巣の中に白く小さな卵が二つ産み落とされているのを発見した時、私の心境は一変しました。これは、数日で終わる話ではない。フンや鳴き声に悩まされる日々が、これから始まるのだ。そう直感した私は、すぐに巣を撤去しようと考えました。しかし、インターネットで調べていくうちに、「鳥獣保護管理法」という、分厚い法律の壁にぶつかったのです。卵や雛がいる巣は、たとえ自分の家のベランダであっても、勝手に撤去してはいけない。その事実を知った時の絶望感は、今でも忘れられません。その日から、我が家のベランダは、完全に鳩の「託児所」と化しました。フンは日に日に増え、洗濯物を干すことも、窓を開けて換気することもままなりません。親鳥の「クルックー」という鳴き声と、やがて卵から孵った雛の「ピーピー」という甲高い声が、朝から晩まで部屋に響き渡ります。私は、巣の下に新聞紙を敷き、毎日それを交換するという、地味で、しかし終わりの見えない戦いを強いられました。正直、憎しみさえ覚えた日もありました。しかし、日に日に大きくなり、親鳥から口移しで餌をもらう雛の姿を見ているうちに、不思議と少しだけ、情が移ってしまったのも事実です。そして、約一ヶ月半後、巣はもぬけの殻になりました。あの騒がしさが嘘のような静寂がベランダに戻った時、私が感じたのは、言葉にできないほどの解放感と、ほんの少しの寂しさでした。もちろん、すぐに管理会社に連絡し、プロの手で徹底的な清掃と消毒、そして防鳥ネットを張ってもらいました。二度と、あんな経験はごめんですから。
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鳩が巣を作る場所とその理由
都市部で暮らす私たちにとって、鳩は公園や駅前広場でおなじみの光景です。しかし、その鳩が、ある日突然、自宅のベランダや軒下を新たな住処として選び、巣作りを始めたとしたら、その平和なイメージは一変し、深刻な問題の始まりとなります。一体なぜ、鳩は数ある場所の中から、わざわざ人間の住まいのすぐそばを選んで巣を作るのでしょうか。その行動には、彼らが子孫を残すために、必死で安全な場所を探し求めた結果としての、明確な理由が存在するのです。鳩が巣を作る場所を選ぶ際に、最も重視する基準、それは天敵からの「安全性」です。彼らにとっての最大の天敵は、カラスや猫、蛇、そしてイタチなどです。これらの捕食者は、無防備な卵や、飛ぶことのできない雛を容赦なく襲います。そのため、鳩の親鳥は、これらの天敵が容易に近づけない場所を、必死で探します。その点において、マンションやアパートのベランダは、まさに理想的な物件と言えるのです。三方が壁や窓で囲まれ、上には屋根があるため、空からのカラスの攻撃を防ぎ、地上からの猫の侵入も困難です。特に、エアコンの室外機の裏や、給湯器の周辺、普段あまり使わない物置の陰といった、狭くて薄暗い隙間は、鳩にとって最高の安心空間、いわば天然の要塞となります。また、鳩は非常に強い「帰巣本能」と「場所への執着心」を持つ鳥です。一度その場所を「安全なテリトリー」だと認識すると、たとえ人間が追い払おうとしても、驚くほどの執念で何度も何度も戻ってこようとします。最初は、単なる羽休めのための「休憩場所」として利用していただけでも、繰り返し訪れるうちにその場所への愛着が深まり、やがては卵を産み、子育てをするための「永住の地」と見なすようになるのです。ベランダに物がごちゃごちゃと置かれている状態も、鳩を誘引する一因となります。植木鉢や不用品などが置かれていると、それらが外敵から身を隠すための格好のバリケードとなり、鳩にとっての安心感をさらに高めてしまいます。つまり、あなたの家のベランダに鳩の巣が作られたのは、そこが「外敵から身を守りやすく、雨風がしのげ、安心して子育てができる安全な場所」であると、彼らに認められてしまったからに他なりません。
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鳩の巣の駆除費用と業者の選び方
ここでは、鳩の巣の駆除にかかる費用相場と、後悔しないための優良な業者の選び方のポイントを解説します。鳩の巣の駆除費用は、その作業内容によって大きく異なります。単に巣を撤去し、清掃するだけの比較的簡単な作業であれば、一万円から三万円程度が相場となります。しかし、多くの場合、これだけでは問題は解決しません。鳩は非常に強い執着心を持つため、巣を撤去しただけでは、すぐにまた同じ場所に戻ってきて巣作りを再開してしまうからです。そのため、プロの駆除は、巣の撤去・清掃に加えて、鳩が二度と侵入できないようにするための「再発防止策(防鳥ネットの設置など)」までを含めて行うのが一般的です。この防鳥ネットの設置まで含めた場合の費用相場は、ベランダの広さや構造にもよりますが、おおむね三万円から十万円程度となることが多いです。高所での作業や、特殊な足場が必要になる場合は、さらに費用が加算されることもあります。では、信頼できる優良な業者を、どのように選べば良いのでしょうか。いくつかの重要なポイントがあります。まず、第一に「現地調査と明確な見積もり」を、無料で行ってくれる業者を選ぶことです。電話だけで安易な金額を提示し、作業後に高額な追加料金を請求する業者は要注意です。優良な業者は、必ず現地を詳細に調査した上で、どのような作業にどれくらいの費用がかかるのかを、項目ごとに明記した、詳細な見積書を提出してくれます。第二に、「作業内容と再発防止策」について、素人にも分かりやすく、丁寧に説明してくれる業者であることです。なぜその対策が必要なのか、どのような効果が期待できるのかを、きちんと説明できない業者は信頼できません。第三に、「再発保証の有無」も、非常に重要な判断基準です。駆除後の一定期間内に、もし鳩が再発した場合に、無償で再度対応してくれる保証制度があるかどうかを必ず確認しましょう。これは、業者の技術力と仕事に対する自信の表れでもあります。そして最後に、複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討する「相見積もり」を行うことです。単に価格の安さだけで選ぶのではなく、これらのポイントを総合的に判断し、最も信頼でき、納得のいく説明をしてくれた業者を選ぶことが、後悔しないための最善の策と言えるでしょう。
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鳩の巣を二度と作らせないための予防策
鳩の巣を撤去し、フンで汚れたベランダを清掃し終えた時の、あの解放感。しかし、一度巣を作られたということは、その場所が鳩にとって「子育てに最適な、安全で快適な場所」であると、認定されてしまったことを意味します。根本的な対策を講じなければ、翌年の春、また同じ場所に新たな鳩がやってきて、悪夢が繰り返される可能性が極めて高いのです。鳩との戦いにおいて最も重要なのは、駆除そのものよりも、むしろ「二度と巣を作らせない」ための徹底した予防策なのです。予防策の基本は、鳩にとっての「安全性」と「快適性」を、根こそぎ奪い去ることにあります。まず、最も確実で効果的な方法が、物理的に鳩の侵入を防ぐ「防鳥ネット」の設置です。ベランダ全体を、隙間なく、そしてたるまないように専用のネットで覆ってしまうことで、鳩は物理的に侵入することが完全に不可能になります。専門業者に依頼するのが最も確実ですが、自分で設置する場合は、鳩が通り抜けられない、網目の細かいもの(三センチ角以下)を選び、天井と床、壁にフックなどをしっかりと固定して、ピンと張ることが重要です。次に、鳩が留まりやすい場所に、物理的な障害物を設置する方法も有効です。例えば、ベランダの手すりの上に、市販の「防鳥ワイヤー」を数本張ったり、剣山のような「プラスチック製のスパイク(鳥よけマット)」を設置したりすることで、鳩にとっての足場を奪い、休憩場所として利用されるのを防ぎます。ただし、これらは設置できる場所が限られるため、防鳥ネットと組み合わせて使用するのが効果的です。また、鳩が嫌がる匂いや感触を利用した「忌避剤」の使用も、補助的な対策として有効です。ジェル状の忌避剤を手すりなどに塗布すると、そのベタベタした感触を嫌って、鳩が留まらなくなります。スプレータイプのものは、鳩が頻繁に訪れる場所に定期的に噴霧することで、ハーブなどの鳩が嫌う匂いで、その場所を不快な場所と認識させます。ただし、忌避剤は雨風で効果が薄れやすいため、継続的な使用が必要です。これらの対策を組み合わせ、「ここは危険で、居心地の悪い場所だ」と、鳩に根気よく学習させ続けること。それこそが、平和なベランダを取り戻すための、最も確実な道筋なのです。
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鳩の巣を発見!まず何をすべきか
自宅のベランダや軒下に、鳩が巣を作っているのを発見した時、多くの人は驚きと焦りから、「すぐに撤去しなければ」という衝動に駆られるかもしれません。しかし、その行動は、法的なトラブルや、予期せぬ危険を招く可能性があるため、絶対に避けるべきです。鳩の巣を発見した際に、あなたが真っ先に取るべき行動は、巣に手を出すことではなく、冷静に状況を把握し、正しい手順を踏むことです。まず、第一にすべきことは「巣の状態を確認する」ことです。ただし、これは巣に近づいて覗き込むという意味ではありません。最低でも数メートル以上の安全な距離を保ち、双眼鏡を使うなどして、巣の中に「卵」や「雛」がいるかどうかを確認してください。この確認作業が、その後の対応を決定する上で、最も重要なポイントとなります。なぜなら、日本の法律「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」によって、許可なく野生鳥獣の卵や雛を捕獲・採取・損傷することが、固く禁じられているからです。もし、巣の中に卵や雛がいる場合、たとえそれがあなたの家の敷地内であっても、その巣を勝手に撤去する行為は法律違反となり、罰則(一年以下の懲役または百万円以下の罰金)の対象となる可能性があります。この場合、残念ながら、私たちにできることは、雛が自力で巣立つまで(孵化してから約一ヶ月から一ヶ月半)、静かに見守ることしかありません。フン害などに耐えながら、その時が来るのを待つ必要があるのです。一方で、もし巣がまだ作りかけの状態で、中が空っぽであったり、あるいは雛が完全に巣立った後の「空き巣」であったりする場合は、話は別です。卵や雛がいない状態の「巣」そのものは、法律の保護対象外となるため、撤去することが可能です。この「巣に卵や雛がいるか、いないか」という一点が、法的に許される行為と、許されない行為を分ける、決定的な境界線となるのです。この事実をまず理解し、巣の状況を冷静に見極めること。それが、鳩の巣問題に対処するための、最も正しい第一歩と言えるでしょう。